『君の顔では泣けない』あらすじからラストまでをネタバレ

『君の顔では泣けない』は、同級生の異性が入れ替わり、元に戻ることがないままの15年間をリアルに描いた小説です。今回は映画化も決定した『君の顔では泣けない』のあらすじから結末をご紹介します。
『君の顔では泣けない』あらすじ
高校生の坂平陸は、前日に水泳の授業で友人とふざけていた際にクラスメイトの水村まなみとプールに落ちたことがきっかけで、翌日に体が入れ替わってしまう。
二人はすぐに元に戻るだろうと取り繕うが、借り者の体の感覚は消えないまま、その生活は15年も続くことになる。
家族、友人、恋人との関係や生理現象すべて他人として人生を歩むことになった陸とまなみ。
二人は互いの情報を交換し合い、協力して生きていくことを決意し、高校卒業後は状況するとを決めたが…。
『君の顔では泣けない』登場人物
◆登場人物
◆坂平陸・・・高校1年生。サッカー部。両親と弟と団地で暮らす。父は前の職をリストラされ工場勤務、母はパートをしている。
◆水村まなみ・・・陸のクラスメイト。ソフトテニス部。両親と一軒家に暮らす一人っ子。地味めな女子。他校の2歳年上の彼氏がいる。
◆田崎・・・陸の友人。
◆笹垣・・・まなみの友人。まなみとなった陸が、田崎などと親しくなり距離を置く。
◆高見・・・まなみの友人。
◆磯矢・・・まなみが所属するテニス部の顧問。お気に入りの女生徒にセクハラを行っている。
◆月乃・・・まなみの高校生時代の彼氏。映画好き。
◆坂平禄・・・陸の仲の良い2歳下の弟。
◆蓮見涼・・・まなみの夫。
『君の顔では泣けない』結末
坂平陸と水村まなみの体の入れ替わりは元に戻ることはなく、入れ替わる前の時間とちょうど同じ15年の歳月を迎えていました。
主人公は陸とまなみですが、物語は陸のみの視点で語られていきます。
突然 女性の体になった陸は、生理のしんどさやセクハラに戸惑い、まなみの彼氏や友人との付き合い方にも悩みます。
読者が女性であれば、陸が体験する女性の大変さを改めて認識し、女であることの生きづらさに共感できると思います。
一方のまなみは、陸の体で生きることに折り合いをつけ、元に戻った時を考えるよりも自分の好きな人生を歩もうとします。(実際、まなみも不安や葛藤はあったようですが…)
なかなか まなみとして生きることに馴染めない陸は、進路を決めるときも、友人の田崎と付き合うときも、出産するときでさえ、まなみに相談して頼り切りです。
どんな時でもまなみは、私のことは気にしなくていいから、陸の好きなようにすればいいと背中を押します。
地元を離れ、東京の大学に進学することになった二人。
陸が田崎と別れて同じ職場の蓮見 涼と同棲を始めた頃、まなみから父親(陸の父)が亡くなったと知らせがきます。
陸は迷いながら葬儀場に向かいますが、泣きじゃくる母とまなみの姿を見て、思い切り悲しめない自分に辛くなってしまいました。
息子なのに他人の姿をしているせいで、父を弔うことも許されない…
陸はその苛立ちからまなみを責め、それから二人は連絡を絶ってしまいました。
そして再び二人が連絡を取ったのは3年後の、陸が涼と結婚して妊娠8カ月の頃。
切迫早産で入院していた陸は、まなみの体がこの世から無くなってしまう恐怖と、初めての出産の不安から泣きながら電話をしてしまいます。
これまで陸は、自分ではないまなみの姿で泣くのは恥ずかしいと思っていましたが、溢れる涙を止めることができませんでした。
そして今回、まなみも陸の体を奪って亡くなるのが怖かったかったと明かしました。
しばらく時間が経った15年後ー
毎年恒例のお互いの近況を報告し合う日がやってきました。
今回二人は母校のプールに手を繋いで飛びこみました。
元に戻るのか、戻らないのか 結果は明日の朝になってみないと分かりませんが、どんなことが待ち受けようとも二人はまたお互いに救いあいながら協力して生きていこうと思うのでした。
『君の顔では泣けない』感想
『君の顔では泣けない』は、よくある男女入れ替わりをテーマにした作品ですが、
●入れ替わりの謎には深く触れない
●15年もの間、元に戻っていない
●入れ替わり後の体の変化リアルに表現されている
などの点が、他の入れ替わり作品と少し違う点です。
体の変化、異性との付き合い、女性の生きづらさ、嘘をついている罪悪感…そんな入れ替わりによって起こる様々な困り事が詳細に描かれています。
エロやギャグ的な要素はほとんどなく、ドラマティックな出来事が起こるわけでもない。
運命共同体の二人は、入れ替わりの事実をひた隠し、それぞれの体でそれぞれの日常を葛藤しながら生きていきます。
女性のライフイベントを男性が体験して語られる切り口や、元に戻る方法を探し続けるのではなく、新しい環境に慣れるという選択をするというのも新鮮です。
最初は陸の方が女で生きることに折り合いが付けられていないと感じ、やきもきしましたが、最後まで読むと実はまなみの方が踏ん切りがついていないような…。
こんな想像をさせてくれる繊細な描写、男性側の視点だけで描ききった潔さにも感服です。
次は女性側の視点でも読みたくなってしまいました。
※まなみの彼女・瑞穂が登場する「アナザーストーリー【Side M】」はKADOKAWA文芸WEBマガジン「カドブン」に掲載されています。
『君の顔では泣けない』は、性差をテーマにしていますが、他者の人生を思いやることによって、自分らしさ、家族のありがたさを今一度振り返るきっかけを与えてくれる作品でした。
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