『ファーストラヴ 』島本理生の原作本あらすじ・ネタバレ結末

邦画

2021年に北川景子さん主演で映画化される島本理生さんの原作の『ファースト・ラヴ』。

タイトルから推測して、甘酸っぱい青春のお話と思う方もいるかもしれませんが、島本さんには珍しくミステリー要素の強い作品です。

特に、異常さが際立つ登場人物たちの関係性には、背筋がゾッとし、最後は、温かい気持ちになる作品でした。

そこで今回は島本理生さんの『ファースト・ラヴ』あらすじ・相関図・ネタバレをご紹介いたします。

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『ファースト・ラヴ 』島本理生の原作のあらすじ


ファーストラヴ [ 島本 理生 ]

『ファースト・ラヴ』あらすじ

「動機はそちらで見つけてください。」

父親を殺害した容疑で、アナウンサー志望の女子大生・聖山環菜(ひじりやま かんな)が逮捕された。

若く美しい女性が起こしたセンセーショナルな事件は世間を賑わすが、動機は不明のままだった。

臨床心理士・真壁由紀(まかべ ゆき)は、環菜の事件のノンフィクション執筆を受け、環菜への面会や、周囲の人々に取材を重ねていく。

そこで明らかになる少女の過去は、由紀自身の過去の記憶とあいまって、意外な結末を迎える。

事件の詳細

22歳の聖山環菜は、事件当日にキー局の二次面接を受けていたが、具合が悪くなり途中で辞退した。

数時間後、父親で画家の聖山那雄人(ひじりやま なおと)が務める美術学校を訪ね、女子トイレに父親を呼び出し、購入したばかりの包丁で胸を刺し殺害した。

血を浴びたリクルートスーツのジャケットを脱ぎ捨て、白いTシャツに紺色のスカートという恰好で自宅へと戻るが、母親と口論になり再び家を出て、多摩川添いを歩いているところを逮捕された。

環菜は「動機は、分からないので、そちらで見つけて下さい。」と語ったが、父親は環菜がアナウンサーになることを反対していたため、周囲は 「就職先を父親に反対されたから殺した」と見立てた。

ごく普通の女子大生が、父親を殺害するというのは相当な覚悟が必要だが、就活に反対されたという理由は弱すぎる。

環菜は なにか隠していると直感した真壁由紀は、夫の弟で環菜の弁護士である庵野迦葉(あんの かしょう)と共に、事件の背景を探りはじめた。

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『ファーストラヴ 』結末・ネタバレ

『ファースト・ラブ』登場人物と相関図

事件の謎を解いていくには、 登場人物たちの関係が非常に重要になります。

特に、注目したいのは、 由紀と迦葉の本当の関係です。

迦葉は、幼いころ両親に捨てられ叔母(=我聞の母)のもとで育てられたため、我聞とは兄弟同然の関係です。

由紀にとっては、義理の弟であり大学の同級生でもある迦葉ですが、それだけではありません。

「私たち、本当は協力できるほどお互いのことを許してはいない」と由紀が言っているように、過去に複雑な事情を抱えているのです。

『ファーストラブ』では、

環菜はなぜ事件を起こしたのか?
由紀と迦葉は過去に何があったのか?

という謎があり、やがて2つの答えるがリンクしていくようになっていきます。

環菜と家族の闇

環菜が事件を起こしたキッカケは、 家族との歪んだ関係にありました。

環菜は、母・昭菜と他の男性と同棲したときに出来た子どもで、那雄人は、環菜の本当の父親ではありませんでした。

しかし 那雄人は、美人な昭菜の子は絶対に綺麗だから堕ろすのはもったいないと言い、昭菜と結婚し環菜を自分の子にしました。

母親からは、幼少期からお父さんには恩があるから、良い子でいなさいと言われ、父親を怒らせたときは「俺が生まれてくるのを許してやったんだから、おまえは俺に恩返しをしなければならない」「言うことを聞かないと、籍を抜くぞ」と脅されていました。

そのため環菜は幼少期から、 「自分の気持ちを無視して相手の期待に応えなければならない」という強迫観念にも似た感情を抱いて育ちました。

「相手の気持ちに応えなければ…」という感情は、やがて環菜の肉体と精神を蝕んでいきます。

トラウマ

小学生の頃に環菜は、父親から絵のモデルとして全裸の男性と一緒に何時間もポーズをとることを要求されたのです。

血縁関係のない父・那雄人の要求を断ると、籍を抜いて捨てられてしまうと恐れた環菜は、自分の気持ちを押さえてモデルをすることを了承しました。

環菜は、裸の男性と密着させられた上、デッサン会の後の飲み会では、酔った大学生に体を触られたりすることもあったというのです。

そんな時でも、両親は、環菜はお兄さんと一緒で嬉しそうにしていると思い、助けてくれることはありませんでした。

(実際、環菜は嫌な顔をすると両親に叱られるので、笑顔で応じていました。)

精神的に不安定になった、環菜はリストカットをするようになりましたが、傷跡が隠せないようになり、那雄人からモデルを休むように言われました。

(那雄人がアナウンサーになることを反対していたのも、腕に傷がある環菜が人前に出れるワケがないという理由でした。)

怪我をすれば嫌なことから逃げられると思った環菜は、そこから頻繁に自傷行為を繰り返すようになっていきました。

一方、母親も腕の傷を、「鶏に襲われて怪我した」という環菜が嘘で言った言葉をそのまま信じているような、無関心な母親でした。

ある時は、リストカットしている人のテレビの特集を見て 「気持ち悪い。」などと言っていたこともありました。

(環菜は、ますます自傷行為のことを話せません。)

環菜は、安心し、信頼できる両親という存在に、相談もできず、奴隷のように扱われてきたのです。

そのため、愛情を知らずに育った環菜は、男性から優しくされるとすぐに心を許し、「期待に応えなければ」という強迫観念から求められるまま肉体関係を次々に結んでいくようになります。

事件の真相

結論から言うと、環菜は父親を殺害していませんでした。

「アナウンサーの試験は、デッサン会と一緒でした。」

環菜は、独り言のようにつぶやき、動機を話しはじめました。

アナウンサーの2次試験には、たくさんの男性面接官がおり、環菜は身動きが取れないような緊張感を感じており、ついに男性たちの視線に耐えきれず、その場に倒れてしまいました。

「自分は失敗した。価値のない人間だ。」と思った環菜は、自分を罰する(留守とカットする)ためにをするために衝動的に包丁を購入し、父がいる美術教室に向かいました。

小学生の頃に男の人から性虐待されたのに親は助けてくれなかった。しかし、腕を切ったら傷がふさがるまではデッサン会を休ませてもらえた。

あの時のように、リストカットし父に話せば、苦しさから救われると環菜は思ったのです。

事件当日、父が勤務している女子トイレで、環菜は包丁で切った腕を父にみせました。

父は「まだ治っていなかったのか。お前がおかしくなったのは母親の責任だから今から母親に電話する。」といってスマートフォンを取り出しました。

環菜は包丁を握りしめたまま、父を止めようとすると、二人はもみ合いになり、足を滑らせた父が包丁の方に倒れてききたため、胸に刺さってしまったのです。

怖くなった環菜は、母に相談するために自宅に帰り、事件の経緯を説明しました。

そこで母から言われたのは、 「(那雄人が亡くなって)私は、これからどうやって生きていけばいいのよ!」という言葉でした。

腕の傷を心配することもなく、逆に自分を問い詰める母親に絶望した環菜は家を飛び出し川べりを一人歩いたのです。

裁判で環菜に下されたのは 懲役八年

環菜が、人気のない場所に父を呼び出し、包丁が刺さっても通報せずに逃走してしまったのは、殺意があったことを否定できないが、幼少期の生育環境が一因となっていることも考えられることから、検察側が求刑した懲役十五年よりも軽い刑となりました。

法廷で大勢の大人が、私の言葉を受け止めてくれた。

無罪にはならなかったものの、裁判の経験を通して、初めて自分には苦しみや拒絶をする権利があると知った環菜は、救われたのでした。

母親も被害者?

由紀は、裁判の休憩中に環菜の母親とトイレでばったり顔を合わせることがありました。

母親の腕には、環菜よりも酷いヤケドや切り傷が見えました。

由紀は、性虐待を受けた娘と、それを見て見ぬふりをする母親の事例を思い出し、環菜の母親も、幼少期に性虐待や暴力を受けていたのでは考えました。

母親が、環菜の虐待や自傷行為に目を背けていたのは、 自分自身のトラウマと対峙するのが恐ろしかったからでした。

環菜の母親もまた、誰にも辛い経験を理解されず、寄り添ってくれる人がいなかったのです。

もし、母親に救いの手を差し伸べる人がいたならば、環菜はあんな事件を起こさずに済んだかもしれません。

由紀と迦葉の関係

環菜の過去と、事件の真相が明らかになりましたが、次のネタバレは 由紀と迦葉の関係です。

「由紀」「迦葉」と呼び合う仲なのに、我聞には、「同級生だったけど、顔をみかけた程度」と嘘をついているところから、かつて 恋人関係にあった?と推測する人も多いと思います。

しかし、由紀と迦葉は、親からの虐待を受けて育った境遇から、シンパシーを感じ、恋人以上の関係を築いたこともありました。

まず関係を語る上で外せない、二人のトラウマについて説明いたします。

由紀のトラウマ

母親は幼少期から由紀に精神的虐待をしてきました。

由紀が花柄のミニスカートを欲しがれば「男好き」と決めつけ、少女小説を読んでいると、「はしたない」と責めるのです。

また、女らしさなんて役に立たない言われて育ち、塾や英会話の他に空手も無理やり習わされました。

一方、父親からは、性的な目で見られていると感じることがありました。

成人式の日には、母から「昔、お父さんはね海外に出張に行っていたとき、少女を買っていたのよ。」と聞かされます。

由紀は、父親の間接的な性暴力や、母親からの束縛に耐えきれず、家を出て、恋人たちの家を転々とする自暴自棄な生活を送るようになっていきます。

また「性的なことなんて、たいしたことではない」と、好きでもない男性と肉体関係を結ぶこともありました。

一方、迦葉も実の母親から虐待をされて育ちました。

両親が離婚したあと、迦葉は母親から捨てられ姉夫婦(我聞の両親)に引き取られ、我聞と兄妹同然に育てられたのです。

迦葉は、我聞の両親や我聞が、本当の家族にように愛情を持って迎え入れてくれたことに感謝はしていますが、心の底では「誰も信じられない」という危うさを抱えていました。

二人の出会い

親から愛されずに心の傷を抱えた二人は、大学で出会います。

迦葉「なんで、そんな不安そうな顔してんの?とりあえず髪切ったら?飯でも食いにいこ!」

由紀「いつも、そんな風に誰にでも声かけてるの?」

迦葉「だって、あなた浮いてるんだもん。どうせ友達いないだろ?」

由紀「あなたは、友達いるの?」

迦葉「とくに、誰も信用してないけど。」

ナンパのような感じで、知り合った二人でしたが、性別に関係なく必要とされる仲間に出会えたと意気投合し、飲みに行ったり、家族の話をしたりして、仲を深めていきました。

そんなある日、ベロベロに酔った二人は、男女の関係になりかけますが、由紀の体は反応せず、経験豊富な迦葉もうまくできませんでした。

「二桁超えるくらい経験あるけど、こんなこと一度もなかった。」と言った迦葉の言葉に傷ついた由紀は、 「その経験人数って、依存症じゃない?母親に愛されなかったから。」と攻撃的な言葉を口にしてしまいます。

自分のトラウマを突いてきた由紀に、怒りをあらわにした迦葉は壁を殴り、二度と由紀と遊ぶことはありませんでした。

それから、由紀への当てつけのように肉感的な女の子と次々と付き合い始め、由紀の前でわざと家族の話をすることもありました。

「自分だけだと思ってた?俺が家族のこと話すの。なんか微妙な顔してるもんね。」

それを聞いた由紀は、屈辱感と寂しさから数日部屋に閉じこもり、何を思ったか、かつて迦葉から聞いたカメラマンの兄・我聞の個展に行くことに決めたのでした。

由紀と我聞の出会い

どうして我聞さんの個展に行こうと思ったのか、今も上手く説明できない。迦葉が知らないことを一つでも作って出し抜きたかったのか。それとも共通の味方が欲しかったのか。単にやけっぱちか。ただ、誰かに胸を張って話せるほど綺麗な動機じゃないことは確かだ。

以前、迦葉が「細くて頭良くて、ちょっと陰にある由紀は兄貴のタイプだよ。」と言っていた通り、我聞は由紀を好きになり、由紀も、自分の傷もすべて分かった上で、包み込むような我聞の優しさに惹かれていきます。

やがて二人は真剣に付き合うようになり、ある日、我聞は 「そろそろ迦葉に由紀を紹介したいんだ。びっくりさせてみたいんだ。」と言いました。

我聞と迦葉は、血は繋がってなくても、とても仲の良い兄弟です。

由紀は、もし迦葉との過去がバレてしまうと我聞に嫌われてしまうと恐れ、事前に迦葉に「私たちなにもなかったことにして欲しいの。お願いします。」と頭を下げた。

迦葉も「あそ。あなたがそうしたいならいいんじゃないの。付き合ってたわけじゃないし。」と冷たく言い、「そろそろ、兄貴が来るから…」と言いかけたとき、我聞がやってきます。

我聞は由紀に向かって「もう(僕たちの関係)を弟に話した?」言うと、我聞の彼女が由紀だと知った迦葉の顔から笑顔が消えていきました。

迦葉が大好きな兄を傷つけるわけない。

由紀は、過去の関係を迦葉が我聞にぶちまけることはないと、知っていました。

この一件から、二人は話すこともなく、よそよそしく親戚として付き合ってきましたが、環菜の事件で、再び向き合うことになったのでした。

和解

弁護士と臨床心理士として、環菜の事件を追うことになった由紀と迦葉でしたが、環菜が過去に受けた虐待を二人で共有するうちに、自然と話せるようになっていきます。

そして、

迦葉「大学時代にあなたを傷つけたこと、他の相手だったらあんなこと言わなかった。由紀なら笑って許してくれると甘えてた。ごめん。」

由紀「私のほうこそ、あなたを傷つけたことを、ずっと後悔してた。あんなこと言いたくなかった。私のほうこそ、ひどいことを言ってごめんなさい。」

と、長い時間を経て、素直にお互いの気持ちを話し、和解することができました。

そして由紀は、ずっと前から気になっていたことを聞ききました。

「迦葉のお母さんは昔から、すごく痩せてた?」

迦葉が「ああ。」と答えると、由紀は納得するように「それが答えじゃない。あなたは母親と同じように痩せている私が怖かったのよ」。

迦葉が由紀と肉体関係を結べなかったのは、虐待された母親と同じように痩せている由紀を女性として見ることができなかったということでした。その証拠に迦葉の付き合う女性は豊満な女性ばかり…。

二人が傷つけあった理由が、親から受けた虐待だったことを理解できた二人は、長い呪縛から解き放たれたのです。

すべて知っていた我聞

迦葉と由紀が和解してしばらくたった、ある日、由紀と我聞は結婚式に参列していました。

我聞は、「僕らの式を思い出すな。 ここに椿は咲いてないけど。」と言いました。

由紀は、自分たちの結婚式で、我聞が何を思ったか、椿の枝を折り「今日からお義姉さんと呼ばせてください。」と冗談めかして言ったこと、由紀が無表情で「お願いします。」と返事したことを思い出していました。

我聞は、 迦葉にとって椿は特別な花で、迦葉が引き取られてきたときに、唯一もってきたのが母親の椿油の瓶だったと教えてくれました。

そして迦葉が大学のときに、「校内で妙に雰囲気のある子がいて、学内で初めてナンパした」と聞かされていた我聞は、二人っきりになったとき「迦葉は由紀ちゃんのことが好きなんじゃないか?」と聞いたのです。

すると迦葉は「大事だったけど、恋愛ではなかった。それがどれだけ特別なことか伝えようと思っても、由紀は受け入れないだろう。」と答えました。

つまり、我聞は、由紀と迦葉が、恋愛ではないが特別な結びつきを持っていたことを全て知って結婚していたのです。

我聞「由紀はこれからはもっと気楽に僕にむかって、迦葉の愚痴を言ったり、褒めたりしていいんだ。由紀は、僕と結婚してよかったと思う?」

由紀「もちろん、 あなたと出会って、私はずっと幸せだった。

我聞にとって、迦葉は大切な弟、由紀は大切な恋人。そして二人が自分を慕ってくる様子はとても良く似ていると感じていました。

しかし、由紀が迦葉のことに触れて欲しくなさそうだったので、これまで黙っていてくれたのです。

我聞の深い愛を知ることができた由紀は、傷ついてもいつかは幸福になれるということを感じたのでした。

最後に

『ファースト・ラブ』のネタバレをまとめると、

環菜が父親を刺したのは事故だった。
両親からの虐待により引き起こされた事件だった。
かつて由紀と迦葉は恋人ではなかったが、同じトラウマを抱えた特別な結びつきがあった。

ということが分かりました。

そして『ファースト・ラヴ』というタイトルにも深い意味が込められています。

私は、小説を読み終えたあと、男性の期待に応えるために悲しい気持ちを隠して“恋”であるかのように振る舞っていた環菜が思い浮かびました。

愛や恋が何なのかもよく分からない少女の“初恋”、そして、生まれて初めて与えられるはずの両親からの“愛”を意味しているのかなと、勝手ながら解釈しました。

物語も非常にうまく構成されていて、ページをめくる手がとまることがありませんでした。

さすが直木賞受賞作品!

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