『法廷遊戯』ネタバレ!あらすじ~衝撃の結末を相関図付きで解説

●記事内にPRを含む場合があります

五十嵐律人さんによる『法廷遊戯』は、法曹の道を目指していた三人があるゲームをききっかけに、一人は弁護士となり、一人は被告人となり、一人は命を失うというリーガルミステリーです。そこで今回は映画化も決定している『法廷遊戯』のあらすじから結末を相関図付きで解説いたします。

-Sponsored Link-

『法廷遊戯』登場人物&相関図

登場人物

久我清義(くがきよよし)・・・ロースクールに通い弁護士を目指す青年。通称”セイギ”。美鈴とは旧知の仲。
織本美鈴(おりもとみれい)・・・清義と同じロースクールへ通う女性。清義とはある秘密を抱え合う関係で強い信頼関係で結ばれている。
結城馨(ゆうきかおる)・・・清義と同じロースクールへ通う優秀な学生ですでに司法試験を突破している。トラブルに巻き込まれる清義たちの相談役だが、自身も秘密を抱えている。
八代公平・・・清義と同じロースクールへ通う学生。
佐倉咲・・・かつて痴漢詐欺を働こうとしていたところを清義に助言された女子高生。現在は清義の法律事務所の事務員をしている。
奈倉・・・清義たちが通うロースクールの若手准教授。
権田聡志・・・墓地で寝泊まりしているホームレス。窃盗罪で捕まり清義が弁護を担当する。
佐沼・・・何でも屋のホームレス。以前 依頼されて美鈴の部屋を盗聴していた。
喜多・・・清義と美鈴がいた児童養護施設の施設長。

相関図

※無断転載ご遠慮ください。

-Sponsored Link-

『法廷遊戯』あらすじ

無辜ゲーム

『法廷遊戯』の舞台は、司法試験合格を目指すための 法科大学院ロースクール。

主な登場人物は、その法都ロースクールに通う久我清義(くがきよよし)、織本美鈴(おりもとみれい)、結城馨(ゆうきかおる)です。

合格者を輩出したことがない法都ロースクールで、久我清義、織本美鈴は司法試験突破を期待されている優秀な学生であり、結城馨にいたっては司法試験を突破しているにもかかわらずロースクールに進学した変わり者です。

そして、物語を語るうえでかかせないのが「無辜ゲーム」という法都大ロースクールで行われていた私的な模擬裁判です。

無辜ゲームは馨によって考えられ、大学にある実際の模擬法廷を使用します。ルールは、

・プレイヤーは加害者・被害者・審判者の三名。
・加害者が何らかの罪を犯し、現場に天秤のマークを残すことでゲームであることを示すと開始される。
・被害者は無視をする、通報する、無辜ゲームに受けてたつという3つの選択肢が与えられる。
・ゲームに参加する被害者(告訴者)は審判者に対して、証人を引き出し、犯行の手順を立証すつなどして犯人を指名する。
審判者は被害者による犯行の立証、犯人の指名が終わると勝敗の宣告をする。
・敗者には基本的に同害報復(仕掛けたときの加害と同等)の罰が与えられる。
・立証が不十分で被害者(告訴者)が負けた場合は、無辜の人間に罪を押しつけようとしたという理由で告訴者が罰を受ける。

というものです。

無辜ゲームの要となる審判者を務めるのは、スクールの“天才”として一目置かれ、信頼される結城馨です。

清義の過去が暴かれ無辜ゲームを仕掛けられる

ある日のこと「無辜ゲーム」が清義にも仕掛けられました。

その内容は、清義が16歳の頃に児童養護施設の施設長をナイフで刺した事件を蒸し返し、暴露したというもの。

清義は名誉棄損されたとして、この「無辜ゲーム」に受けて立ち 勝利しましたが、犯行に用いられた児童養護施設の集合写真や事件を報じた新聞記事をどうやって見つけたのか…。

清義が加害者であるロースクールの学生に聞いてみると、「何者かが自分のロッカーに入れていた」と言います。

つまり、加害者の学生は清義の過去を知る黒幕に利用されただけだったのです。

そんななか黒幕は織本美鈴にも矛先を向けてきます。

美鈴のアパートのドアにアイスピックが突き刺さされる事件がおき、そのアイスピックの柄には天秤のマークが添えられた手紙がくくりつけられていました。

また美鈴が関わっていない女子高生たちによる痴漢詐欺の記事も投函されていました。

しかしその後 清義や美鈴の嫌がらせはパタリと止み、彼らは法都ロースクールを卒業しました。

事件

卒業から1年ほど経ったころ、法修習を終えた清義のもとに結城馨から1通のメールが届きました。

「久しぶりに、無辜ゲームを開催しよう。とある人物から、告訴の申し立てがあった。(中略)場所はいつもの模擬法廷で」
出展元:五十嵐律人「法廷遊戯」より

清義は同窓会も兼ねていると思い、メールで指定された日に母校の法都大ロースクールを訪れました。

模擬法廷に足を踏み入れると傍聴席には誰もいなかったものの、証言台には黒い法服を着たが倒れていました。

そして、馨の胸元にはナイフが刺さっていました。

傍には美鈴の姿があり、彼女の服と手は馨の返り血により紅く染まっています。

自分は馨を刺していないという美鈴は、警察が駆けつける前に清義に「私の弁護人を引き受けて」と頼んだのでした。

-Sponsored Link-

『法廷遊戯』結末までのネタバレ

勝ち目のない裁判

清義は美鈴の依頼を断る理由もなく、彼女の裁判にすべてを賭けるつもりで自分の事務所を構えました。

事務員には、かつて痴漢詐欺を働こうとしていたところを助言して救った佐倉咲を迎えました。

とはいえ、日本の刑事裁判の有罪率は99.9%

さらに美鈴の置かれている状況は、

・凶器のナイフには美鈴の指紋がついている。
・美鈴が浴びた返り血はDNA鑑定により馨のものと一致している。

と、誰がどう見ても彼女は真っ黒です。

事件当日に模擬法廷に入室したのは、馨、美鈴、清義の三人にのみであるということも間違いありません。

こんな不利な状況であるにもかかわらず、美鈴は味方の清義にも黙秘を貫きました。

一体 彼女は何を隠しているのでしょうか?真相を話せない理由は?

清義と美鈴の秘密

清義と美鈴は、かつて同じ児童養護施設で過ごしていましたが、そこの施設長・喜多は美鈴に性的暴行を加えていました。

美鈴が汚されたことを知った清義は施設長を刺し、傷害の容疑で逮捕されます。

美鈴は清義の少年院行きを阻止するため、喜多に美鈴を押し倒した映像を公開しない代わりに嘘の供述をするように持ちかけました。

喜多はその取引に応じ「 事件が起きたのは、自分が彼に暴力を振るっていたことによる」と証言したことで清義が罪に問われることはありませんでした。

この事件をきっかけにして清義と美鈴は、恋人でも友人でもない強い信頼関係で結ばれることになりました。

二人の罪

清義と美鈴はもう一つの秘密を背負っています。

かつて二人は進学の費用を稼ぐため、お金を持った男性を狙って痴漢詐欺をしていました。

しかしその日、ターゲットにした男性は現役の警察官でした。

美鈴はすぐにその場を立ち去ろうとしましたが、警官は彼女の手を掴んで離しませんでした。

そして警官と美鈴は、そのまま階段から落下

清義は美鈴を守るため、倒れた警官のたジャケットの胸ポケットに盗撮映像が保存されたペン型のカメラを入れました。

罪なき人を陥れたのです。

警官は無実を主張しましたが実刑判決が下され、その後 控訴することもなく服役中に精神を病んで、自ら命を絶ったのでした。

そして、その警官こそが馨の父親だったのです。

事件の真相

馨が父親の復讐のために事件を計画したとすれば、すべて辻褄が合います。

馨が佐沼という“なんでも屋”の男を雇い美鈴の部屋を盗聴していたのも、清義と美鈴の痴漢詐欺の罪を確かめるためでした。

二人の罪を確信した馨は、彼らに無辜ゲームを仕掛けました。

そして馨の目的は、美鈴を犯人に仕立て上げることだけではありませんでした。

「美鈴が虚偽の供述をしたせいで、父さんは起訴された。でも、嘘を嘘だと見抜けず、無実の罪で有罪判決を宣告したのは、この国の司法だ。父さんは、服役中に精神を病んで自ら命を絶った。きっかけを作った美鈴と、引き金を引いた司法。どちらか一方に全ての責任を負わせることが相当だとは思えない。だから、双方に報いを受けてもらうことにした」
出展元:五十嵐律人「法廷遊戯」より

馨の真の目的は父親の痴漢冤罪事件の再審請求(裁判のやり直し)でした。

馨は自ら被害者となり、美鈴に罪をかぶせることで裁判に持ち込ませました。

「美鈴に有罪判決を甘受させようとは考えてないよ。それは過ちを繰り返すのと同義だから。裁判の日を迎えたら、この映像を被告人側の証拠として請求すればいい。父さんの無実と自己の無実を同時に証明する。それが、美鈴が果たすべき役割だ」出展元:五十嵐律人「法廷遊戯」より

馨は事件当日の様子を撮影したSDカードを美鈴に渡していましたが、彼女に裁判当日まで黙秘させることで不起訴になることを防いでいました。

結末

美鈴は決定的証拠であるSDカードのおかげで有罪になることはほぼ無くなりました。

清義は美鈴を救うことができて一安心となるところでしたが、ここで一つの疑問を持ちました。

馨の最終目的は父親の再審請求でしたが、息子である彼が亡くなってしまってはその権利はなくなってしまいます。

(馨の両親は離婚しているので、母親に請求権はなし)

清義はここであることに気づきました。

馨が美鈴にかぶせようとしていた罪は殺人罪ではなく、殺人未遂だったのではないかということ。

事件の日、馨と美鈴は打ち合わせをして映像に残されることを前提に芝居をしていました。

シナリオでは、自ら命を絶とうとするフリをした馨が胸にナイフを振り下ろしたときに、美鈴がナイフを止めるはずでした。

しかし美鈴は止めず、証言台に覆いかぶさるフリをして馨が右手に握っていたナイフを彼の胸に突き刺したのが真相でした。

これもすべて美鈴が、過去の痴漢冤罪の罪から清義を守ろうとしたこと。

実は、痴漢詐欺のときに警官を突き落としたのは清義でした。

そのことは現場にいた馨も知っており、それが明らかになれば清義は罪に問われ、弁護士も辞めなければなりません。

美鈴は児童養護施設にいた頃に救ってくれた清義を、今度は自分が守ろうとしたのでした。

すべてを知った清義は、

「僕は、報いを受けなくちゃいけない」

と裁きを受け入れる決意を固めました。

そして、これからも二人で生きていきたいと泣き崩れる美鈴を残して、清義は警察に出頭しました。-END-

『法廷遊戯』感想

『法廷遊戯』は自身も弁護士である五十嵐律人さんの作品で、緻密なロジックと二転三転する展開はデビュー作とは思えないほどの迫力を感じました。

物語は司法試験突破を目指す学生たちの間で行われる私的な裁判「無辜(むこ)ゲーム」から始まり、やがて清義と美鈴の過去が暴かれ、舞台は実際の法廷へと向かっていきます。

真相に至るまでには馨や美鈴の思惑、罪と罰が複雑に絡み合い、被害者と加害者の立場がめまぐるしく変化していきます。

キャラクターも魅力的で、児童養護施設で出会った清義と美鈴は恋人でも友人でもなく、犯した「罪」によって固い信頼関係で結ばれているという関係は東野圭吾さんの『白夜行』を彷彿とさせました。

またもう一人の主要人物である結城馨は、司法試験に合格しながらも底辺ロースクールに進学したという異質な存在。

“天才”として同級生や准教授から一目置かれ、「無辜ゲーム」の審判者を務める彼もミステリアスな存在です。

馨は父親の復讐を行いますが、その方法は美鈴や清義に直接危害を加えるのではなく、父親の再審も含めて間接的に罰を下す計画は圧巻でした。

同害報復は復讐ではなく、正当な対価で許す寛容の論理であるというのも興味深く、表紙のリンドウの花言葉「正義」について改めて問われているような気がしました。

ラストは清義と美鈴どちらも「このまま一緒に生きていきたい」と願うものの、一人は罪を認め罰を受ける道(天秤)、もう1人は罪と向き合う道(十字架)をそれぞれ選択。

切なさの余韻が残る読後感も素晴らしかったです。


-Sponsored Link-

  1. この記事へのコメントはありません。