竹野内豊『人間の証明』あらすじ~結末を相関図付きでネタバレ

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松本清張 不朽のミステリー『人間の証明』は、犯罪者を異常なまでに憎悪する刑事が来日してわずか一週間後に命を奪われた黒人の事件を追う物語です。今回は、2004年に竹野内豊さん主演でドラマ化された『人間の証明』を振り返ります。

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『人間の証明』あらすじ

東京お台場で、アメリカ国籍の黒人が何者かに刺され命を奪われるという事件が発生する。

所轄の刑事・棟居弘一良は、犯人逮捕への異常なまでの執念を買われ、本庁捜査一課への異動を命じられジョニー殺害事件の捜査にあたることになる。

長い陸橋の出入り口辺りで倒れていたジョニーには目撃者もおらず、所持品もなかったため身元も分からない。

唯一の手掛かりは、亡くなる直前に「ストーハ」という言葉を漏らしたのを通行人が聞いていたこと。

このダイイングメッセージは何を意味するのかー。

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『人間の証明』登場人物&相関図

登場人物

棟居弘一良(竹野内豊)・・・警視庁捜査一課の刑事。34歳。幼少期に父親が米兵に命を奪われたことで人間不信となり、犯人逮捕になると、異常な執念を燃やす。
ジョニー・ヘイワード (池内博之)・・・ミシシッピ州から来た外国人。28歳。来日して1週間ほど経過した頃に何者かに刺され“ストーハ”という謎の言葉を残して亡くなる。
本宮桐子(夏川結衣)・・・女性誌の契約記者。棟居の児童養護施設時代からの幼なじみ。
横渡篤(大杉蓮)・・・港中央署の刑事。棟居とコンビを組んで、ジョニー殺害事件の捜査にあたる。
那須英三郎(緒形拳)・・・警視庁捜査一課係長。ジョニー殺害事件の指揮官。
山路利雄(佐藤二朗)・・・捜査一課主任刑事。棟居を一方的にライバル視している。
草場健次(おかやまはじめ)・・・港中央署の刑事。
富永雅彦(山崎樹範)・・・警視庁捜査一課管理官。上層部の顔色をうかがいながら捜査を進める。
河西善行(津嘉山正種)・・・警視庁捜査一課課長。ジョニーの事件の解決が長引き、上の指示で捜査本部を縮小しようとする。
郡恭子(松坂慶子)・・・人気エッセイスト。病気療養中の夫・陽平の地盤を引き継いで知事選に立候補し、精力的に政治活動を行う。
郡陽平(鹿内孝)・・・恭子の夫。前神奈川県知事。脳硬塞で入院中だが恭子に助言を与える。
郡翔平(高岡蒼佑)・・・恭子の息子。23歳。小遣いかせぎのために、麻薬密売に手を染めるなど素行が悪いが好青年を演じている。
郡さやか(堀北真希)・・・恭子の16歳になる娘。明るい今どきの女子高生だが、母・恭子の嘘を不信に思う。
朝枝路子(松下奈緒)・・・翔平の恋人。彼と一緒にいたいがために、犯罪に協力する。
佐伯友也(田辺誠一)・・・陽平の秘書で恭子の秘書兼選挙参謀。若いが冷静な策士。将来政治家になるという野心を持つ。
小山田武夫(國村隼)・・・元工場経営者。仕事中に事故にあい身体障害者になったことで工場を畳んだ。車椅子生活となるが失踪した文枝の行方を探している。
小山田文枝(横山めぐみ)・・・クラブで働く。ある夜に翔平の違法行為を目撃したため、別荘に監禁されてしまう。
新見隆(風間杜夫)・・・文枝の愛人。会社社長。文枝を愛し、小山田に協力して彼女を探す。
相馬晴美(りりィ)・・・・恭子の過去を知る人物。恭子の知事選立候補を知り、金を強請りはじめる。
中山タエ(池田貴美子)・・・霧積の旅館・金湯館の元仲居。夫と横須賀で居酒屋兼売春宿「かもめ」を切り盛りしていた。
ウィルシャー・ヘイワード・・・ジョニーの父。ベトナム戦争に出兵した頃に、日本の米軍基地に滞在していた。

相関図

※無断転載ご遠慮ください。

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『人間の証明』最終回の結末

ジョニー・ヘイワードが刺され亡くなってから61日後、棟居はついに郡恭子へたどり着き事件は大詰めを迎えた。

一方、小山田文枝殺しの容疑に怯える郡翔平は、母・恭子の指示でアメリカへ逃亡を図るが検問を前にして断念する。

前神奈川県知事郡陽平圧力で及び腰の警視庁に対し、ジョニー殺害事件捜査本部は棟居の言葉を信じ、確実な物的証拠がないまま郡恭子任意同行に踏み切った。

恭子を取り調べした棟居は、ジョニーは金目的ではなく一目母親に会いたくて日本にやってきたこと、その証拠に刺された現場から歩道橋を渡る際に誰にも助けを求めず所持品を捨ててまで母を庇ったと明かした。

しかし恭子は、その話を聞いても動じることはなかった。

棟居は自分も母に捨てられたと言い、最後の切り札としてジョニーが持っていた西条八十の詩集から「ぼくの帽子」の一節を読み上げた。

それはジョニーが唯一 母親と旅行した霧積を舞台にした詩だった。

棟居は「あなたがジョニーの母親ですね。あなたが刺したんですね。」と問うと、恭子は涙をこぼして静かにうなずいた。

恭子の歪んだ人間性が形成されてしまったのは、幼少期の悲惨な出来事によるものであった。

まだ幼かった恭子は母親が連れ込んだ男に暴行され、母はそれを知っていたにもかかわらず何もしてくれなかった。

そしてあるとき、恭子は家に火を放って母を殺し、親戚をたらいまわしにされたあと上京した。

そして夫と横須賀で居酒屋「かもめ」を切り盛りしている中山タエに面倒を見てもらった。

恭子は居酒屋「かもめ」で売春をしていた頃に相馬晴美と出会い、日本を脱出する晴美から戸籍を譲り受け、別人として生きることにした。

その後横須賀で体を売って生活し、黒人米兵・ウィルシャー・ヘイワードと出会った恭子は、すべてを清算してアメリカという新天地で生きようと決めた。

まもなくジョニーが誕生し、相馬晴美の名で出生届けを出した。

それから4年後、恭子は郡陽平と出会いプロポーズされたことで、自分にはもっと価値があると思い込んだ。

そして横須賀で火災事故が起こりウィルシャーがジョニーを連れて先にアメリカに帰国したことを機に、政界に進出しようとした陽平を支える人生を選択した。

その際に横須賀の売春宿で働いていたこと、ジョニーを産んだことを隠すため、再び矢杉恭子に戻った。

それから23年後、恭子の元にジョニーからヘイワードが亡くなった手紙が届いた。

恭子は自分がアメリカに会いにいくまで待っていてと返事を送るが、アメリカで犯罪に加担して追われていたジョニーは約束を破り日本に逃げるようにやって来た。

恭子は偽名でホテルにチェックインし、ジョニーに帰りの航空券と200万円の現金を渡すため一夜限りの夕食を共にした。

しかし、帰ったはずのジョニーはまだ日本に滞在し、アメリカには帰国できないから日本で暮らして時々会いたいと恭子に話した。

迷惑はかけないというジョニーに、恭子は「あなたの存在が迷惑なの」とナイフを突き立てた。

その言葉を聞いたジョニーは恭子に抱きつき、自らナイフを自分の体に深く突き立てた。

そして観覧車のイルミネーションの帽子を見ながら息絶えたのだった。

恭子は唯一の味方だった中山タエを殺害するつもりはなかったが、痴呆が始まっていたため誰かに自分のことを話す恐れやむなく犯行を犯した。

「生きていくため過去を捨てるしかなかった」という恭子に、棟居は「生きて行くには過去に向き合うしかない」と告げた。

そして翔平さやか二人の子どもの母親であることから逃れることはできないと話した。

事件後 新見隆は妻と離婚調停に入り子会社に出向、小山田武夫は介護用品を製造する小さな会社をおこした。

郡翔平は懲役10年 朝枝路子には懲役3年が言い渡され、選挙参謀だった佐伯友也は三年後に衆議院選挙に立候補して当選を果たした。

記者の本宮桐子郡陽平の告発を記事を発表し、陽平から提訴され係争中、

容疑を全面的に認めた郡恭子は懲役20年で控訴はせずに、そのまま服役した。

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『人間の証明』感想

松本清張原作『人間の証明』は、これまで何度も映像化され韓国でもリメイクされた人気作です。

今回 取り上げたのは2004年にフジテレビで放送されたドラマで、犯罪者を執拗に憎む刑事を竹野内豊さんが演じています。

一人の黒人青年の死によって、戦後の混沌とした暗い時代を生き抜いてきた女性の壮絶な過去が暴かれ、人間の残酷なまでの階級格差が描かれています。

父を米軍に殺された棟居は息絶えるまで母をかばって亡くなったジョニーに自分を重ね、「母さん、僕のあの帽子どうしたでせうね…」と詩を語る場面にはグッとくるものがありました。

そのシーンでは、これまで頑なに犯行を認めようとしなかった恭子が涙を流し、静かにうなずいたのも印象に残っています。

また本筋の事件とは関係ないものの小山田と新見のターンも好きでした。

よく悲劇と喜劇は隣り合わせと言いますが、夫と妻の愛人という普通なら対立関係にある二人が、愛する女性を救うため協力する姿は、切なくもあり可笑しい。

最後に刑事の那須が「戦後60年…日本人は大事なものを失ってしまったのかな」と漏らすシーンがありますが、戦後80年となる令和という時代にも通じる深い言葉に感じました。

本作は謎解きよりも、宿命や情念など人間の業に重きを置き、普遍的なテーマを扱っているので、今みても十分に見ごたえのある作品でした。

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