『四月になれば彼女は』ネタバレ!あらすじ~結末を相関図付きで

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『四月になれば彼女は』は、結婚を控えた主人公が、かつての恋人から届く手紙により「失われていく愛」に翻弄されていく姿を描いた作品です。そこで今回は映画化も決定している川村元気さん著『四月になれば彼女は』のあらすじ~結末を相関図付きでご紹介いたします。

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『四月になれば彼女は』登場人物&相関図

登場人物

藤代 俊・・・精神科医。弥生との結婚を控えているなか、初恋の相手・ハルから手紙が届く。
伊予田春・・・藤代が医学部の三年生のときに写真部で出会った。かつての恋人。世界中を旅しながら藤代に手紙を送る。
坂本弥生・・・藤代の婚約者。獣医師。藤代と付き合う前に婚約破棄した過去がある。
・・・弥生の妹。夫がいながら複数の男性と関係を持ち、藤代も誘惑する。
大島・・・藤代が所属する写真部のOB。学生時代からつきあっていた彼女と結婚している。
タスク・・・藤代の友人。ゲイ。
奈々・・・藤代の後輩。誰もが振り向くような美貌を持っているが、異性を拒絶するような空気を纏っている。

相関図

※無断転載ご遠慮ください。

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『四月になれば彼女は』あらすじ

精神科医として大学病院に勤務する藤代 俊は、一年後に坂本弥生との結婚を控えていた。

そんななか 藤代のもとに、大学時代に初めて付き合った恋人のハル(伊予田春)から突然 手紙が届く。

4月の現在ハルは、奇跡の絶景とも呼ばれるボリビア西武の町ウユニ塩湖を訪れ、そこから手紙を送ってきていた。

その後も手紙はやってきて、7月の手紙はチェコのプラハから。

10月の手紙はアイスランドのレイキャビクから。

そこには旅先の美しい情景と共に、藤代に出会ってからの思い出が、瑞々しく丹念に綴られていた。

彼女の手紙により恋の記憶が蘇った藤代だったが、一方で弥生との結婚に迷い始める。

藤代と弥生は、かれこれ2年間 体の関係も無かった。

ほんとうに彼女を愛しているのか」「このまま結婚しても良いのか」

「なぜハルは今になって、自分に手紙を書いたのか」

藤代の失った恋に翻弄される12か月がはじまる―

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『四月になれば彼女は』ネタバレと結末

愛することをサボった藤代の過去

かつて大学の写真部で出会った藤代とハルは、お互いに惹かれ合い付き合いはじめます。

そんななか、写真部のOB・ 大島がハルのことを好きになってしまいます。

大島は、大学卒業後に就職しますが精神的に病んで退職。

その後、学生時代から交際していた女性と結婚し、彼女に支えられながら生活をしています。

9月のこと、ハルから藤代のもとに「助けて。大島さんが!」と電話がかってきます。

藤代が駆けつけると、空になったピルケースが置かれたベッドの上で昏睡している大島と、その横で佇む放心状態のハルの姿がありました。

大島は一命ととりとめ、そして見舞いにいった藤代とハルは彼の妻から、

「あの人は、何度かこういうことをしています。(中略)だから伊予田さん、どうか気にしないでください。あの人は、いつも死に追いかけられているんです。どのみち、こうなったんです」

と聞かされました。

藤代には大島とハルの間に何が起こったのか分かりませんでしたが、彼の妻はすべてを理解しているようでした。

そして帰り道、藤代とハルがバスを待っていると、大島が病室を抜け出して追いかけてきました。

「ハルちゃん! ハルちゃん!」と叫ぶ大島でしたが、ハルはすぐに逃げ出し、顔を歪めながら藤代を置いて行ってしまいました。

その事件の日を境に、藤代は写真部に顔を出さなくなり、ハルも来なくなりました。

ハルからが一度だけ「会いたい」と留守電メッセージがありましたが、藤代が連絡をすることはありませんでした。

藤代はめんどくさいことから逃げるように、そのままハルと別れたのでした。

弥生との関係

藤代はハルと別れてから、やっと好きになれた坂本弥生と婚約中です。

実は藤代と付き合うまえ、弥生には婚約者がいたのですが、直前で婚約を破棄した過去があります。

現在、結婚を控えた二人はタワマンでゆったり一緒に暮らし、一見 何の問題もない関係を築いているようですが、二年ほど、藤代と弥生はベッドを共にしていません。

3年前に出会った頃、藤代は確かに弥生を愛していましたが、今 自分が彼女を愛しているのか分からなくなっていました。

藤代の迷いや疑問は解消しないまま、結婚式の準備だけは着々と進行していきます。

弥生の家出

結婚式まであと4か月となった12月のある日、弥生が突然 家出をしてしまいます。

心当たりのない藤代は、みっともないと思いながらも弥生の妹・に相談することにしました。

かつて藤代は純に誘惑されたことがあり、一線を越えかけたことがありましたが、なんとか未遂に終わっています。

藤代と純の危うい関係が、弥生の家出の原因と考えそうですが、実はそんなことではありません。

弥生は藤代が「いま幸せに思っていないこと」「なにを考えているのかさえ分からない」と感じていたのです。

弥生もまた藤代と一緒に生活していくなかで、気持ちを重ね合わせていくことをサボっていたことに気づいていました。

ハルの真実

2月になった頃、藤代はハルが末期がんで亡くなっていたことを知ります。

藤代はハルが最期の時間を過ごした療養所を訪れました。

藤代は担当の医師から、ハルが海の水平線にカメラを向けながら「わたし、どうやら間に合わなかったみたいです、と」と言っていたことを聞かされます。

帰宅した藤代は寝室のベッドで弥生の香りをかぎながら、サイモン&ガーファンクルの曲『四月になれば彼女は』の

“九月、僕は忘れない。生まれたばかりの愛も、やがて移ろい過ぎてゆくってことを”

という歌詞を思い出していました。

そして、ふと見たベッドの枕元には、封を切られたハルからの4通目の手紙が置いてありました。

そこには

最後に行く場所は、決めていました。インドのカニャークマリ。フジと見ることができなかった朝日を、見にいこうと思っていました。(中略)わたしは、わたしに会いたかった。あなたのことが好きだった頃のわたしに。あのまっすぐな気持ちでいられた頃の自分に会いたくて、手紙を書いていたのです。(中略)いまフジが愛する人がいて、その人がフジのことを愛してくれることを願っています。

と綴られていました。

結末

手紙を読んだ藤代は、10年前にハルを諦めたように、今 自分は弥生にも同じことをしていることに気づきます。

そして4月になった頃、藤代は日本を旅立ちインドに向かいました。

ハルが自分と一緒に見たいといっていたインドのカニャークマリの朝日を見に行くためです。

藤代が海岸に到着すると数千の人々が集まり、水平線から昇る朝日を見つめていました。

群衆からの歓声が沸き起こるなか、藤代はひとりで朝日を見つめている弥生を見つけます。

藤代は彼女の名前を呼びながら、スーツケースを引きずり近づきました。

弥生は藤代を見つめ、藤代の目からは涙が溢れました。

また、弥生とあたたかいコーヒーを飲もうと思った。(中略)一日の終わり。眠る前におやすみと言って、一緒のベッドで眠る。漫然と続く日常のなかで、愛をつないで生きていく

藤代は群集をかき分け、四月の朝日に照らされた彼女の元に駆け寄りました。-END-

『四月になれば彼女は』感想

この作品は、表紙やタイトルから受けるような穏やかでロマンティックな恋愛小説でありません。

「人を愛し続けることの難しさ」つまり「永遠に続く愛はない」ことを軸に、冒頭からラストまで「なぜ人は人を愛するのか」という禅問答を突きつけられるような少し怖い物語です。

永遠に続かない愛と知っていながらも、人は人を愛し、その愛が失われていくことを止めることが出来ない。

理屈では理解できないことですが「いま一緒にいる人のことを本当に愛してますか?」と問われているようで、心がザワザワしてきます。

物語のなかには他にも、夫婦生活がない弥生の妹や異性と接触することを拒絶する藤代の後輩、“ゲイだと噂されている”友人など様々な愛のカタチを表現するキャラクターが登場します。

共通するのは、みんな「孤独」を感じていること。

そのなかでもゲイの友人が言った「でも僕、思うんです。人は誰のことも愛せないと気づいたときに、孤独になるんだと思う。それって自分を愛していないってことだから」という言葉が刺さりました。

ハルが撮る儚い写真のように、刹那的ですぐに消えてしまうようなストーリーですが、映像表現のプロ・川村元気さんらしさ溢れる色彩感覚を刺激する小説でした。

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