『ある閉ざされた雪の山荘で』ネタバレ!あらすじ~結末を相関図付きで
東野圭吾さんによる『ある閉ざされた雪の山荘で』は、人の往来が途絶えた山荘で一人ずつ消えていく…という古典的な設定を逆手に取った作品です。読み進めるうちに、これは芝居か?殺人か?と翻弄され、複雑に仕掛けられたトリックに驚かされます。今回は重岡大毅さん主演で映画化も決定した『ある閉ざされた雪の山荘で』のあらすじ~結末をご紹介いたします。
『ある閉ざされた雪の山荘で』あらすじ
劇団「水滸」の次回作のオーデションに合格した男女7名は、演出家である東郷陣平からの指示で、乗鞍高原のペンションにて合宿を行うために集まった。
彼らには東郷から手紙が届き、そこには合宿に内容と、誰かに口外したり欠席をした者は、オーディションの合格を取り消すと書かれてあった。
合宿の内容は、外部との連絡を絶たれた吹雪の山荘を舞台に殺人が発生するという設定であり、あくまでも劇団の舞台練習とされている。
そんななか一人のメンバーの消息が分からなくなり、現場には殺害された状況を説明するメッセージが残されていた。
あまりにもリアルで不可解な状況に、参加者たちは「本当に殺人事件が起こっているのではないか?」と疑うようになっていく。
果たしてこれは芝居なのか?7名が集められた目的はー。
『ある閉ざされた雪の山荘で』登場人物&相関図
◆登場人物
【オーディション合格者】
◆久我和幸・・・「堕天塾」の元劇団員で俳優を目指し、外部からオーディションに応募し300人のなかから選ばれた。演技力・容姿などの評価が高い。由梨江を狙っている。
◆笠原温子・・・女性メンバーのリーダーで演出家の東郷と恋人関係との噂がある。一定水準より上の演技力がある。
◆元村由梨江・・・容姿端麗なお嬢様。父は劇団「水滸」のパトロンで、財界との繋がりもある。
◆雨宮恭介・・・男性メンバーのリーダーで劇団「水滸」の古株。演技力はそこそこ。由梨江の恋人。
◆田所義雄・・・感情の起伏が激しく軽薄な性格。由梨江に好意を抱き、合宿中にもアタックを仕掛ける。
◆本多雄一・・・言動は粗野だが、温厚な人物。実力派だが、華がない。
◆中西貴子・・・色気と才能がある個性派。ふしだらそうな振る舞いをするが、自由奔放で明るい素直な性格。和幸を気に入っている。
【その他】
◆小田伸一・・・ペンション「四季」のオーナー。自宅は、山荘から10分ほどの距離にある。
◆東郷陣平・・・劇団「水許」の演出家。奇抜な演出と稽古を行うことで知られているが、最近は落ち目といわれる。独裁的だがそれが彼の持ち味でもある。独身で温子とは恋人関係という噂がある。
◆麻倉雅美・・・劇団「水許」の元メンバー。演技力や表現力はピカイチだが、容姿がいまいちで華に欠ける。今回のオーディションでは、由梨江と同じく「ジュリエット」を演じ、由梨江より良い演技をしながらも落選。
◆相関図
※無断転載ご遠慮下さい。
『ある閉ざされた雪の山荘で』結末までネタバレ
◆奇妙な合宿に集まられた合格者(1日目)
主人公・久我和幸は、劇団「水許」に所属する元村由梨江に一目ぼれしてから、彼女に近づくため「水許」の次回作の出演オーディションを受け、見事 合格しました。
一か月後 合格者7名は、演出家・東郷陣平の手紙により、乗鞍高原のペンション「四季」に集められ3泊4日の舞台稽古を行うことになりました。
稽古は外は吹雪で外部とは連絡がとれない状況を想定しており、演技が続けられない者は抜擢された役を下ろされる可能性もあります。
メンバーは、久我以外はすべて「水許」の劇団員ででしたが、皆 彼に親切に接してくれました。
久我は実力派の本多雄一に、オーディション会場でひときわ良い演技をしていた麻倉雅美という女優が選ばれていないことを不思議に思い尋ねました。
しかし、本多を含め「水許」の劇団員は、麻倉のことが話題にのぼることを避けているようでした。
麻倉のことが気になりつつも、久我は由梨江と一緒の時を過ごせることに満足していました。
◆最初の被害者(2日目)
翌朝、皆が目を覚まし1階のラウンジに集まるなか、深夜に一人で遊戯室のピアノを弾いていた笠原温子の姿が見えません。
そして2階の遊戯室には、
笠原温子の死体はピアノの傍にあり、ヘッドホンのコードで首を絞殺された 地面は雪に覆われ、足跡はなし
という手紙が置かれていました。
久我は、手紙により外部犯は否定されていることから、自分以外のメンバーのなかに筋書きを知る「犯人役」がいると推測しました。
久我がそれぞれに探りを入れるなか、中西貴子から温子と演出家の東郷陣平が恋人関係であることを知らされます。
さらに、オーディションで不合格となった麻倉雅美は、ショックのため地元に戻りスキー事故に遭って半身不随になったといいます。
本来であれば主役になるはずの麻倉がもう舞台に立てないことを考えると、肉体を武器に合格した温子のことを相当恨んでいるとも考えられます。
果たして、麻倉の件は本当に事故だったのか?仕組まれた事件なのか?自殺なのか?
◆二人目の被害者(3日目)
3日目の朝 元村由梨江が別荘から失踪し、部屋からは、
由梨江の死体は、前頭部に鈍器による打撃痕があり、首を絞められた痕が残っている
という手紙がまたしても見つかります。
しかし、2つめの事件には不審な点がありました。
●男性には見られたくない生理用品が残されていたこと。(被害者役を指示されたなら、由梨江が生理用品を隠さなかったのはなぜなのか)
●「この紙を鈍器とする」という演出のための紙が置かれていたのに、血のついた花瓶が発見されたこと。
次第にメンバーたちは、本当にこれが芝居であるのか疑問を持ち始めます。
久我は、梨江の父が資産家で「水滸」のパトロンをしているという事実を知り、演技が上手いとはいえない彼女がオーディションに合格したのも父への配慮があったののではと考えました。
そんななか、由梨江に想いを寄せていた田所義雄が「麻倉雅美の恨みを晴らそうとする人物が犯人ではないか」と言い始め、外部から参加した久我を疑いはじめます。
◆最後の被害者(4日目)
次の日の朝、3人目の犠牲者が出るはずでしたが、無事に朝を迎えました。
しかし、朝食後に睡眠薬を盛られたメンバーは、その場で眠り込んでしまい雨宮京介が失踪してしまいます。そして、
死体の状況、雨宮京介は首を絞められて殺されている
というメッセージが書かれた紙が残されていました。
実は 雨宮京介は、麻倉雅美の見舞いに行ったとき笠原温子と元村由梨江に同行しており、麻倉の恨みをかっている人物でした。
久我は、笠原温子の「殺害現場」と元村由梨江の部屋の間に、不自然な隙間を発見し、本多雄一が犯人であると告げました。
この事件は、麻倉雅美が計画した復讐計画で、さらに協力者の本多が芝居に仕立てたものでした。
◆犯人と動機
失踪した笠原温子、元村由梨江、 雨宮京介は、近くのペンションに待機させられていて無事でした。
本多が犯人であることを認めると、第一現場の遊戯室と第二現場の部屋の間の物入れから、車いすに乗った麻倉雅美が出てきました。
彼女はここで4日間、本多が行う犯行を見届けていました。
本多は想いを寄せる麻倉の恨みを晴らすため、彼女の目の前で3人を殺害するフリをしていましたが、麻倉は途中から、これが芝居であることに気づいていました。
麻倉がここまで3人を恨んでいたのは、オーディションに合格しなかったことが発端でした。
かつて麻倉は、密かに雨宮に好意を抱いていました。
だからオーディションでは、「ロミオとジュリエット」で雨宮が演じたロミオの相手役であるジュリエットを選びました。
しかし、麻倉の容姿はジュリエットには向いておらず、いくら素晴らしい演技をしたところで由梨江の美しさにはかないません。
あえなく落選した傷心の麻倉は、故郷に帰りました。
そして部屋に引きこもり、演出家の東郷に肉体を捧げた温子、親のコネで役を獲得した由梨江、そして由梨江と婚約をしていた雨宮を憎みました。
そんななか、3人が麻倉の女優復帰を説得するため実家を訪れましたが、麻倉は聞く耳を持ちませんでした。
麻倉は3人が帰り際に、自分のことを忘れたように、温子が由梨江と雨宮の仲を冷やかし、ドライブでもして楽しんで帰ろうという会話を聞いてしまったのです。
とっさに麻倉は、3人が乗ってきた車のタイヤに穴をあけ、彼らは何も知らず帰っていきました。
しばらくして温子から「車のハンドルがきかなくなり、雨宮と由梨江が崖下に転落した」と電話がかかってきました。
「私は人を殺してしまった」そう思った由梨江は、スキー板を持って家を飛び出し、滑走禁止の雪を滑り自殺をはかったのでした。
これにより下半身不随になった麻倉でしたが、雨宮と由梨江の事故が嘘だったことを知りました。
あの日、彼らはパンクで立ち往生しましたが、すぐにそれが麻倉の仕業だと気づき、嘘の電話をかけたのでした。
◆結末
それから車椅子生活となった麻倉は、3人の面会を拒絶していましたが、自分の演技を評価してくれていた本多雄一にだけは徐々に心を許していきました。
そして、これまでの出来事をすべて彼に打ち明けました。
本多は麻倉の話を聞き終えると涙を流し「あの三人を絶対に許さない。麻倉が納得するまで謝らせる」と怒りの炎を燃やしました。
自分への愛を直球で伝えてくる本多の気持ちを試すように、麻倉は「あの3人を殺してくれる?」と告げました。
こうして、麻倉と本多の復讐計画が進み始めたのです。
しかし、さすがに本多は殺人に手を染めることはできず、3人に事情を説明して一芝居をうったのでした。
すべてを知った麻倉は、本多と3人に自分が犯罪者にならずに済んだことに感謝して、今後も仲間が芝居を続けてくれることを願いました。-END-
『ある閉ざされた雪の山荘で』感想
ミステリーではよくある外との連絡が途絶えたなかで起こるクローズド・サークルと呼ばれる手法のお話ですが、現場は、雪なども降っておらず電話もつながる状況。
ですので、最初はメンバーが失踪しても、そこまで緊迫感を感じませんでした。
しかし、徐々に不可解な点が多くなり、これは本当に芝居の稽古なのか、現実に起こっている事件なのか、登場人物も読者も翻弄されていきます。
古典的な手法だと思わせといて、三重構造(殺人劇ごっこ→まじの殺人事件?→やっぱ殺人劇ごっこだった)というトリックと最後に明かされる動機の切なさには唸りました。
登場人物も魅力的で、狭い倉庫のなかカロリーメイトで4日間耐えた麻倉の執念、役者というより刑事が向いてそうな久我の洞察力には驚くばかりwww。
なかなか複雑な構造でしたが、種明かしまでスムーズに読み進められたのは、さすが東野圭吾さん!(初期の作品とは思えない)
結末はピースがうまくハマリすぎている感じもありましたが、30年前とは思えない新鮮さを感じる作品でした。
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