『スピノザの診察室』結末までのあらすじを登場人物&相関図つきで紹介

●記事内にPRを含む

『スピノザの診察室』は、京都の小さな地域密着型病院で働く医師が「幸せとはなにか」を問い、最期に希望の明かりをともす物語です。今回は映画化も決定した夏川草介さんによる『スピノザの診察室』をご紹介します。

-Sponsored Link-

『スピノザの診察室』登場人物&相関図

登場人物

雄町哲郎・・・原田病院の内科医。大学病院で将来を期待される勤務医だったが、甥:龍之介を引き取ることになり退局して、京都の町中ある原田病院で働くことになった。大の甘党。
原田百三・・・原田病院の七十近い年齢の理事長。
鍋島 治・・・外科医。病院長でもある。愛車はBMWの大型バイク。
中将亜矢・・・外科医。年齢不詳。愛車はシルバーの高級英国車。
秋鹿淳之介・・・元精神科医の内科医。愛車は赤いアルファロメオ。
土田 勇・・・外来看護師長。
五橋美鈴・・・病棟主任看護師。
花垣辰雄・・・哲郎の先輩である洛都大学准教授で一流の消化器内科医。
南 茉莉・・・洛都大学の消化器内科医。花垣の勧めで哲郎のもとに研修医としてやって来る。
天吹祥平・・・哲郎の五年下の親しい後輩。
西島基次郎・・・哲郎の一年後輩。切れ者で虚栄心が強く、哲郎をライバル視している。
美山龍之介・・・哲郎の甥。中学一年生。母が亡くなり伯父である哲郎に引き取られる。
美山奈々・・・哲郎の妹で龍之介の母。シングルマザーだったが、病気のため他界。

スピノザ・・・オランダの哲学者。生前は無神論者のレッテルを貼られ異端視され、著作が発禁になったこともある。哲学の表舞台に出てこない間も執筆を続け、レンズ磨きによって生計を立てていた。

-Sponsored Link-

相関図

※無断転載ご遠慮ください。

-Sponsored Link-

『スピノザの診察室』結末までのあらすじ

マチ先生

主人公のマチ先生こと雄町哲郎は、中学一年生の甥・美山龍之介と京都に暮らしている内科医です。

もともとは洛都大学病院で医局長だったマチ先生でしたが、一つ下の妹・美山奈々が若くして病によって亡くなり、唐突に子どもの引き取り手になったのです。

当時 龍之介は小学4年生だったこともあり、マチ先生は拘束時間の長い大学病院にいては子育ては無理だと判断し、大学病院の退局を決心しました。

しかしマチ先生は、内視鏡治療のスペシャリストで将来を期待されていたため、教授からは怒りを買いました。

そして、唯一応援してくれた先輩・花垣辰雄のつてを頼って、小さな地域の病院である原田病院で働きはじめました。

個性豊かな医師たち

原田病院の現場では、マチ先生を含め個性あふれる医師が働いています。

肝の据わった磊落な外科の鍋島、歯切れのよいロジックと冷静さが持ち味の女医・中将、口数は少ないが患者の緊張を解くのが得意な元精神科医の秋鹿そしてマチ先生の4人は、抜群のチームワークで日々 患者の対応に当たっています。

(ちなみに、登場人物の名前には日本酒の銘柄が付いています)

そのなかで秋鹿は、精神科医だったこともあり狂気の淵にたつ患者を見続けたために、心を病み原田病院にやってきたという経緯があります。

マチ先生は、狂気の果てを見て逃げ出してきたと言う秋鹿の心の内を知りますが、あえて踏み込まず、自分は「もっと死について知りたい」と話しました。

秋鹿はそれを聞いて驚くと同時に「勇者」のようなマチ先生の考えを知り、少し気持ちが楽になったのでした。

アメリカへの誘い

マチ先生は大学病院で数々の難手術を成功させ、将来を嘱望された凄腕の消化器内科医でした。

花垣は、ことあるごとに大学病院に戻るよう誘いますが、マチ先生は今の病院で高齢の患者たちと向き合う意味を模索しており、首を縦に振ろうとしません。

ある日、花垣はアメリカのボストンでの内視鏡手術ライブの助手をマチ先生に頼みますが、案の定 あっさり断られてしまいます。

記者の葛城と共にアメリカに発った花垣でしたが、いつも大学病院で診ている9歳の少年の容態が急変し、マチ先生に電話をかけてきました。

尋常ではない精度で瞬時に少年の治療方針を助言するマチ先生に、花垣は自分が留守の間の手術に立ち会って欲しいとお願いします。

大学病院の手術室に入り込んだマチ先生は、大事にならないようにさりげなく手術の助手を務め、少年の処置は無事成功しました。

スピノザの思想

哲学者のスピノザは、人間は無力な生き物で大きな世界の流れは最初から決まっていて、人間の意思では変えられない。だからこそ努力が必要という思想を持っていました。

普通なら、辿る道が決まっているなら努力しても無駄だと考えそうなところを、スピノザは「努力」するべきだと言います。

そんなスピノザの思想をマチ先生は、一人自宅で亡くなった患者の検死を終えたところでに静かに話しました。

医療の力は本当にわずかなもので、人間は儚い生き物で、世界は冷酷で無慈悲だけれども、無力感にとらわれてはいけない。

人が互いに手を取り合うことで少しだけ景色を変え、誰かを勇気づける。

そんな風に生み出された勇気や希望を「幸せ」と呼ぶんじゃないだろうか。

マチ先生が「幸せはどこからくるのだろうか」と考えていた答えが、少しばかり見えた印象的なシーンでした。

-Sponsored Link-

『スピノザの診察室』感想

『スピノザの診察室』は、派手なオペシーンなどは出てきませんが、医療が人の生死にどのように関わるのかをテーマに生活保護受給を拒む高齢者、介護、看取りなどを静謐に描いた作品です。

「薬をうまく使えば最後の時間も楽に過ごせるというのは幻想」「がんばらなくていい」と淡々と話すマチ先生の言葉は、一見 医師らしからぬ言葉ですが、患者の遺志を尊重して最期の迎え方を選ばせてくれる優しい言葉です。

アル中の辻さんが、もう誰にも迷惑をかけないように救急車も呼ばず、免許証の裏に「おおきに 先生」と書き残したエピソードは号泣してしまいました。

マチ先生が働く病院では、患者のほとんどが寝たきりで病気が治る見込みがない高齢者。

最高の医療を提供しても救えない命があるという どうしようもない現実があります。

マチ先生はそんななかでも患者の苦痛を和らげ、介護をする家族にも寄り添います。

医師だって人間だから万能ではない。けれど、心に少しでも明かりをともすことはできる。

医療とは「真っ暗闇で凍える隣人に、外套をかけてあげること」だとマチ先生は考えます。

原田病院のように、最初から亡くなるまで同じ医者がずっと診てくれるのは本当に安心できることで、小さい病院であってもこんな先生たちに診てもらいたいなと思わずにはいられませんでした。

なお『スピノザの診察室』は、続編が予定されているそうです。

マチ先生と南先生との関係や妹の遺児・龍之介の将来も気になるので、ぜひ続きを楽しみに待ちたいと思います。

映画『神様のカルテ』あらすじ・ネタバレは⇒こちら


-Sponsored Link-

  1. この記事へのコメントはありません。