『眼の壁』ネタバレ!あらすじ~結末を相関図付きで解説
パクリ屋の手形詐欺の真相を探る社会派ミステリー小説『眼の壁』が、小泉孝太郎主演でドラマ化されます。そこで今回は、松本清張 原作の『眼の壁』を、あらすじから結末まで相関図を交えながらネタバレしたいと思います。
『眼の壁』相関図と登場人物
◆登場人物
◆萩崎竜雄・・・主人公。昭和電業製作所の会計課次長。パクリ屋グループの正体を追う。
◆田村満吉・・・新聞社社会部の記者。竜雄の学生時代の友人で一緒に事件を探る。
◆関野徳一郎・・・昭和電業の会計課長。竜雄の上司。手形詐欺の責任を取り自殺。
◆瀬沼俊三郎・・・昭和電業の顧問弁護士。
◆岩尾輝輔・・・長野県選出の代議士。パクリ屋が彼の名刺を使用し、銀行の応接室を借りた。
◆山杉喜太郎・・・麻布に事務所を持つ山杉商事の社長。
◆上崎絵津子・・・山杉商事の美しい女秘書。
◆舟坂英明・・・戦後に勢力を伸ばしてきた右翼団体のボス。
◆梅井淳子・・・酒場「レッドムーン」のマダム。船坂の愛人?
◆山本一男・・・酒場「レッドムーン」のバーテン。
◆相関図
『眼の壁』あらすじ
昭和電業産業に勤める 萩崎竜雄の上司で、課長の 関野徳一郎は、給料支払いの金融工作でパクリ屋グループによる詐欺に引っかかり、3000万円の手形を詐取される。
社長から叱責され、責任を感じた関野は、事件の詳細を記した遺書を萩崎に残し、湯河原の山中で自殺する。
萩崎は、手形詐欺事件の背後にうごめく右翼団体の存在を知るが、会社の信用に関わるため、警察に捜査を依頼することができない。
そこで、長期休暇を取って自ら真相を追跡しようと決心し、学生時代の友人である新聞記者・ 田村万吉と共に事件の真相を追っていく。
『眼の壁』ネタバレ結末
◆美しい女
事件が起こる前、関野は堀口五郎というパクリ屋を高利貸・山杉商事社長の 山村喜太郎から紹介されていた。
そこで萩崎は、山村商事に話を聞きに行くが、社長は不在で、代わりに美しい秘書の・上崎絵津子が対応した。
手がかりを得ようと、萩崎が絵津子を尾行すると、彼女は「舟坂」という表札の屋敷に入っていった。
新聞記者の 田村満吉によれば、その邸宅の主は、 舟坂英明という右翼のボスであることが判明する。
舟坂は戦後、詐欺、恐喝などで金を集め、めきめきと頭をあげてきた切れ者。
早速 篠崎は、舟坂の愛人がマダムを務める、銀座のバー“レッド・ムーン”を訪れるが、そこでベレー帽をかぶった 田丸という男と知りあう。
その直後、上崎絵津子が「先生」と呼ばれる男と入店してきた。
しばらくして、絵津子が店を出ると、篠崎は後を追ったが、路地裏で袋叩きにあってしまう。
次の日、萩崎は昨夜「先生」と呼ばれていた男が、長野県選出議員の 岩尾輝輔だったことに気づいた。
岩尾議員と言えば、関野が引っかかった手形詐欺の現場で、彼の名刺が使われていた。
萩崎は田丸と一緒に、岩尾議員に話を聞きにいくが、彼は事件への関与を狼狽しながら否定した。
◆第二の事件
昭和電業から、手形詐欺の捜査を依頼されていた顧問弁護士・ 瀬沼俊三郎は、元刑事で従業員の田丸利一に、舟坂の周辺を探らせていた。
ある日、レッドムーンの客を装った田丸は、情報を聞き出すため店のバーテン 山本一男を競馬場に呼び出し、その夜、二人で飲み歩いていた。
しかし、執拗に付きまとう田丸を危険に感じた山本は、田丸を新宿の風俗店で射殺する。
山本は、パクリ屋の一味だったのだ。
さらに、田丸の通夜に訪れた瀬沼弁護士が、何者かに拉致されてしまう。
一方 萩崎は、絵津子が羽田空港で、名古屋行きの飛行機に乗った山本を見送ったと知る。
萩崎と田村は、急いで名古屋に向かい各駅で降りた乗客や、宿を調べたが山本らしき人物は見当たらなかった。
同じ日、瀬沼弁護士は、宗教団体のを装った団体と共に、担架に乗せられ、電車で岐阜方面へ運ばれた。
◆第三の犠牲者
舟坂に取材にいく田村と別れた篠崎は、のどかな瑞浪駅をブラブラすることにしたが、のどかな風景には似つかわしくない「清華園」という精神病院を見つける。
一方、田村は宇治山田に滞在している 舟坂英明に取材を装って、会っていた。
背が低く、ずんぐりした体型の舟坂は、若いのに威圧感と貫禄があり、記者の田村もたじたじで何も聞き出すことができなかった。
そんななか、木曽の山中で瀬沼弁護士の餓死体が発見される。
東京で拉致された瀬沼が、なぜ山のなかで餓死することになったのか…。
警察が捜査をすすめるなか、逃走中の山本一男の本名が 黒池健吉であることが判明する。
篠崎が、早速 長野県で黒池健吉の戸籍謄本を調べると、健吉には 幸子という妹と、音次という従兄がいることが分かった。
健吉の生まれた農村は貧しい土地で、近くには革を加工する工場があるのみ。
戦前、健吉の従兄の音次は、貧しさから抜け出すために十六七歳で村を出たという。
◆トリック
そんななか、青木湖で田丸殺しの容疑者として追われている健吉の白骨腐乱死体が発見される。
遺体は死後推定4カ月以上たっており、萩崎は健吉は名前と顔は割れてしまったので、危険を感じた組織から消されたのだと推測する。
そして萩崎は、健吉の遺体が発見された近くの駅に、陶器の欠片を詰め重さ調節のされた木箱が送られていることを知る。
駅に向かうと、都会的な美しい女性が木箱を確認して帰っていったという目撃証言が得られた。
萩崎は、その女性が絵津子で、木箱のなかに入っていたのは健吉の遺体であったことを直感し、すぐに田村と健吉が生まれた集落の老人を連れて、瑞浪の精神病院「清華園」に向かった。
◆ネタバレ
健吉の従兄弟は、 舟坂英明こと梅村音次だった。
長野県の貧しい村で生まれた音次は、幼い頃から差別を受け、世間を見返してやろうと思い、若くして村を飛び出した。
そして戦後の混乱のなか、身分を偽り舟坂英明として右翼のボスに登り詰めた。
音次は、従兄弟の黒崎健吉と健吉の妹・幸子(上崎絵津子)を半ば強引に組織に引き入れたのだった。
やがて、瀬沼弁護士が手形詐欺のことを調べ、自分にも捜査の手が伸びていると知った舟坂は、瀬沼弁護士を誘拐し、餓死寸前の状態で木曽の山中に放置した。
さらに、田丸を射殺して指名手配となった健吉も用なしとなったため、故郷の革工場で革をなめすときに使われるクロム硫酸液で遺体を溶かした。
そして、首つり自殺に偽装するため、わざと遺体を白骨化させ、偽装して青木湖に運んだのだ。
◆結末
萩崎たちが「清華園」に到着すると、絵津子は監禁され、クロム硫酸液の入った浴槽に沈められる寸前だった。
健吉が生まれた集落の老人は、舟坂の事務次長の山崎を見て「音次。わりゃあ立派になったな」と言った。
そこで萩崎と田村は、山崎事務次長が、舟坂英明であることに気づいた。
そこに警官隊が突入してきた。
もうこれまでか…と悟った音次は、地下にある濃クロム硫酸液の入った浴槽に飛び込み亡くなった。ーEND-
『眼の壁』感想
1958年に発表された『眼の壁』は、事件と日本の原風景や因習的な蔑視の歴史を見事に融合させた社会派ミステリーです。
不気味な右翼組織、妖しい女秘書、ベレー帽の男などの登場人物に加え、弁護士の拉致、なりすまし、腐乱した死体など読者を飽きさせない展開はさすが松本清張です。
携帯電話もない時代の足を使った地道な捜査と、タバコ、電報、赤電話、各駅停車の汽車…昭和の雰囲気をこれでもかと突っ込んだストーリーは、たまりませんね。
また この頃は、新聞社の地位が高かったようですね。
個人情報にうるさくない時代にあったにせよ、名刺一つで、名前や住所などが簡単に聞き出せることに驚きました。
物語の途中に挟まれる萩崎の俳句も、なんだか哀愁があって、ストーリーの良いスパイスになっています。
ただ、後半の謎解きに持っていく過程は、やや強引で、萩崎が絵津子を庇う理由も、「美人で惚れてしまった」の一点張りなのが少し弱いような感じがしました。
一方で、現代では通用しないトリックが満載なので、WOWOW版ドラマではどのように落としこんでいくのか楽しみです。
ドラマ『眼の壁』キャスト相関図は⇒こちら
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